東京高等裁判所 昭和28年(う)607号 判決
被告人 春原嘉一郎
〔抄 録〕
論旨(三)について。
原審及び当審において取り調べた証拠によると、原判示第一(三)摘示の日時場所において被告人がXから供与を受けた現金五千円は、一応被告人居宅にその儘保管し置き、その後被告人が本件につき所轄本牧地区警察署において係官から取調を受けるに及んで同署係官が被告人の供述に基いて該金員を押収した事実を窺い得るから、本来右五千円は原審においてこれを没収すべきであつたに拘らず、没収することができない爾余の原判示利益と共にその価額を追徴した原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかな違法があるといわねばならない。尤も当審における被告人の供述によると、右金五千円は原判決後、原審検察官からこれを被告人に還付し、同人はこれを消費してしまつたことを認め得るけれども、かかる爾後の事実によつて原判決の右違法が補正されるものでないのみならず、右事実に基いて当審が更に追徴することは正義に反するものと認める。故に本論旨も理由があり、原判決はこの点においても破棄せざるを得ない。
註 尚本判決は破棄自判し主文で被告人から六千円を追徴しているのであるがその法令の適用に関する説明において「被告人が収受した利益金一万一千円から原審において没収すべかりし金五千円を除いた残金六千円は没収することができないから公職選挙法第二二四条後段に則り被告人からその価額を追徴し……」と述べている。